スマートコントラクトについて
仮想通貨は1500種類も存在する!と前回の投稿で書きましたが、国内で主だった「中央集権的」ではない仮想通貨は、
・イーサリアムクラシック
あたりでしょうか。
各々、お気に入りの銘柄がある方も多いと思いますし、仮想通貨の世界でも「これこそは!」と長期的な観点から投資している方々もそれなりにいるようです。
このなかでも、「イーサリアム」また、そこからハードフォーク(分岐)した「イーサリアムクラシック」を愛好する人は、これが持つ「スマートコントラクト」という仕組みに将来性を見出だしていることが多いようです。
このスマートコントラクトとはなにか?
仮想通貨の持つブロックチェーン技術は、仮想通貨としての使われ方のほかにも、この「スマートコントラクト」としての使われ方が模索されており、世界各国でその実証実験が行われています。
一言で表すなら「契約をプログラムで実装する仕組み」であって、端的には「自動販売機にお金を入れてボタンを押すと缶コーヒーが出てくる」ようなものだと言われています。
例えば、メルカリの配送をヤマト運輸が行うとして、商品をイーサリアムで決済していた場合、ヤマト運輸が玄関先に届けた時点で「お届け登録」すれば、引き渡し時点でアカウント間での仮想通貨の移動(決済)を実行する、なんてことができるようになります。(手数料の安い代引きみたいですね
仮想通貨の移動に停止条件をつける、とでも言えば分かりやすいでしょうか。
これによって、何が嬉しいの?というと、おそらく多くの金融取引で、カウンターパーティーリスクとか決済リスクなんて呼ばれるものがなくなることが、とても影響としては大きいのではないかと。
また、各種のルールは文言による契約書ではなく、プログラムで記述されることから「解釈の曖昧性」が一掃されるメリットもあります。(個人的には、特に複雑な金融商品の組成や管理に多大なメリットが生まれるのでは?と想像しています
と、少し話がそれましたが、それらの主に法人決済は決済金額はとても大きいので、仮にスマートコントラクトを利用した仮想通貨決済が一般的になれば、仮想通貨のニーズもそれなりに増えてきそうです。
そういった分野以外でも、例えば、↓のようなレポートでは不動産売買でスマートコントラクトを使うとかいう案もあるようですね。
http://www.lij.jp/html/jli/jli_2017/2017summer_p018.pdf
とは言っても、スマートコントラクトをもって仮想通貨が使われるかどうか?は、まだまだ可能性のひとつとして考えなければならないようです。
実際、日本取引所グループの実証実験を受けたワーキングレポートでは、決済のファイナリティについて、
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対応案としては、案 1:既存の決 済インフラとの連携、案 2:決済にかかわる金融機関内のみで流通する貨幣トークンの活用、案 3: デジタル通貨の活用の 3 点が考えられる。
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と案のひとつとして考えられてはいるものの、他の手段に比べると、
・仮想通貨を受け取った主体が、仮想通貨の受領で資金決済のファイナリティを判断できるか
・仮想通貨の規模
の2点で課題があると評価しています。
二点目は、2016 年 6 月末時点の1兆円規模の時代の話なので、今後、どうにでもなる話だとしても、問題は1点目(一般的受容性)の問題ですね。
また、個人的には、バーゼル規制で仮想通貨の保有を一律自己資本控除だとされたりしてしまうと、金融機関が仮想通貨による決済を行うことの障害のひとつになってしまう気がしています。(これは、価格のボラが改善しない限り、さもありなん、ではないでしょうか
こんなことを考えると、短期的には上の日本取引所案の1あたりが現実的な落としどころ、つまり、「分散台帳・スマートコントラクトを活用しつつも、例えばイーサはガスとして使うだけ」というのが現実的なのかなぁという気がしています。
こういう類のサービスとしては、GMOが手がける、Z.com Cloudなるサービスあたりは(仕組みの詳細は知らないのですが)、ちょっと未来感があって良いですね。
https://cloud.z.com/jp/products/blockchain/
いずれにしても、こんなに価格変動が大きくて、処理速度が低下して、決済手数料が安いとは言えなくなっているビットコインを、わざわざ決済手段として使おうという人はいなさそうに思います。
決済してる間に価格が大きく変わっちゃった!なんてシャレにもなりませんから。
電子マネー・仮想通貨(暗号通貨)の分類について
2018年は「仮想通貨元年」と言われ、億リ人なんて話題でも賑わっていましたが、年が明けて、仮想通過の相場は急落。
1月18日現在では、本格的なリバウンドも回復もなく、目も当てられない状況です。
「仮想通貨技術、暴落による弱体化望まず=シンガポール中銀長官」
https://jp.reuters.com/article/singapore-cenbank-cryptocurrency-idJPKBN1F4097
なんて発言していましたが、正にそのとおり。
ブロックチェーン=投機的なもの、でもありません。
ドイツやフランスが国際的な規制を提案する方向のようですが、 建設的な議論・規制になることを願ってやみません。
さて、前置きが長くなりましたが、今日は「仮想通貨(暗号通貨)」や「電子マネー」にはどういうものがあって、そのなかで、今話題の「仮想通貨」はどう分類されるの?といったことをお話ししてみようと思います。
下図は国立国会図書館の資料(※1)からの引用ですが、主に「個人間(P to P)」の電子的な決済手段を機能的な側面から分類すると、
1. 汎用性
2. 転々流通性
3. 管理方法
の有無や種類によって区分することができると言われています。(例えばSuicaやオンラインゲームの価値など身近なものを当てはめてみてください)
この分類によると、巷で話題の「仮想通貨」と言われるものは、「汎用性、転々流通性があるもの」と、ざっくり分類できますね。
「分散型仮想通貨」つまり「分散台帳(DLT)」による管理なんていうキーワードも見えてきますね。
こうやって、技術的・機能的な観点から整理すると、なんとなく決済手段に用いられるものを、頭の中で整理できますね。
「汎用性、転々流通性があるもの」という定義を更にブレイクダウンすると、
① 価値の尺度
② 交換手段
③ 価値の保蔵手段
として用いることができる、とでも定義できそうです。
つまり、同じDLTの技術を用いて安全性の高い仕組みを作ったとしても、
価値が安定していないものは、①③の観点から「通貨」といえず、
街のお店やインターバンクの決済で使うことができなくても②の観点から「通貨」とは言えません。
今の仮想通貨について言えば、日本でもビックカメラやメルカリで導入されるようになって、②については改善の兆しがまったくないわけではないのですが、少なくとも①と③の機能は決定的に欠落しています。
ビットコインやイーサリアムなど主要コイン以外にも、現在、世界には1500種類もの仮想通貨が存在し投機の対象となっていますが、
・そもそも通貨と言えるのか?
・将来的に通貨と呼べる銘柄があるのか?
というと、いずれも現時点では「通貨」というワードで「それらしさ」を演出している投機対象に過ぎないのでしょうか。
仮想通貨の先駆けは、 1995年にイギリスのナショナルウエストミンスター銀行が実験した「モンデックス(※2)」だったと言われていますが、
少なくとも、1995年のモンデックスの方が先進的・理性的な取り組みだったような気がしてなりません。
いずれにしても、今は通貨・決済手段の過渡期にあるのかもしれません。
大きな混乱なく、便利な世の中になれば良いですね。
次回は、「仮想通貨の将来性」について、書いていこうと思います。
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※1 http://www.nii.ac.jp/about/upload/all_NIIToday69.pdf
※2 モンデックスは、1995年にイギリスのスウィンドン市(人口 17 万人) で、一般消費者 4 万人、店舗約 1000 店が参加する大規模な実証実験が行われました。当時は技術的・法律的問題があったこともあり、取扱銀行が広がらず実用化には至りませんでした。
日立評論「電子マネーシステム モンデックスの新展開」
http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1997/05/1997_05_06.pdf
日本の銀行員がFintechについて考えてみる
「日本の銀行員がFintechについて考えてみる」
思いつきで始めてみました。
仕事で触れたり、本やレポートを読んだりして、知識は増えていきますが、
いざ血となり肉となっているか?というと必ずしもそうとも言えず。
そんなわけで、知識の整理と思考のブログにしていければなと考えています。
そのうち、公開することがあれば、よろしくお願いします。
(続かなかったらカッコ悪いので、ある程度書けたら公開しようかな)